「私たちの生理の課題についてもっと知ろう」limerime主催「MHM(月経衛生対処)座談会」のレポートを公開!

多文化のバックグラウンドをもつICUの女子学生、男性医療従事者、薬剤師、広告炎上チェッカー、limerimeが結集

竹の繊維を表面材に用いたプラスチックフリー&生分解性のサニタリーブランドlimerime(ライムライム)が、国際基督教大学(ICU)に通う日本人女子学生と韓国人女子学生、医療従事者の男性、ジェンダード・イノベーション薬剤師の岡下真弓、Twitterで広告炎上チェッカー@EnjoCheckとして活動するコタースカ梨華と、女性のエンパワーメントにつなげるイベント「MHM座談会」を実施しました。(敬称略)
 

【第一部/MHMとSDGs】環境問題と生理の関係
イベント第一部では、limerimeの須藤紫音とジェンダード・イノベーション薬剤師である岡下真弓さんが、MHMの課題を語りました。参加者の発言内容をダイジェストで振り返ります。

■世界で推進されているMHM
日本ではあまりなじみのない言葉、「MHM(月経衛生対処)」。MHMとは「menstrual hygiene management(月経衛生対処)」の略で、「女性と思春期の女子が経血を吸収する清潔な生理用品を使い、それをプライバシーが確保される空間で月経期間中に必要なだけ交換でき、石鹸と水で必要な時に体を洗い、使用済みの生理用品を廃棄するための設備にアクセスできること(※1)」と国際社会で定義されています。つまり、月経によって恥ずかしさや恐れを感じることなく、誰にも排除されず、個人の権利が守られた日常を送ることができるための課題のこと。

日本では大阪大学・人間科学研究科の杉田映理氏がこのMHの課題について研究をしていますが、専門家や有識者の間でも日本ではまだ浸透していない現状です。この理由を、limerimeの須藤は次のように推測します。「トイレの水・衛生面や設備が世界トップクラスといっても過言でないほど既に整備されている日本では、MHMの課題は「発展途上国 / 貧困を抱える人たち」の問題として私たちよりもほど遠いものだ捉えられている、というのが理由のひとつかもしれません。しかし、日本でも生理の貧困や、軽減税率対象商品から除外されていたり、専門家(医師等)にアクセスできなかったり……と課題は無数にあります」(limerime須藤)

実際に、スコットランドが2022年にはサニタリー用品をすべての女性に無償提供することを法律化していますし、アメリカの12州、カナダ、イギリス、フランス、インド、ケニア、オーストラリアや韓国などは、無償化、非課税化、軽減税率の適応化にそれぞれ取り組んでいます。一方、日本では法制化されていないものの、東京都立の250校では2021年以降、トイレでの無料設置がされて生理用品の無料設置を進める大学が増えています。


■MHMの8つの課題とは?

(引用https://ic.hus.osaka-u.ac.jp/mhm/ ※WHO and UNICEF. 2012. "Consultation on Draft Long List of Goal, Target and Indicator Options for Future Global Monitoring of Water, Sanitation and Hygiene." UNESCO. 2014. "Puberty education & menstrual hygiene management."大阪大学 杉田映理 准教授日本語訳)

ICU二年生の宋さん曰く、昨年末から今年1月にかけて、生理の貧困に取り組むICU学生団体「オク+パス」が生理用ナプキンを限定的な期間で無料配置した際に、初めて「生理の貧困」という言葉を知ったとか。普段はサニタリー品を買うことができても、ここぞというときにサニタリー用品が入手できず、学校の授業が受けられなくなりそうなときがあったそうです。

「トイレに行って急に生理になってしまったと分かったときに、トイレに生理用ナプキンが置いてあり、助かりました。トイレにナプキンがなかったら、トイレから出てわざわざどこかへナプキンを買いに行かなければいけません。そうしたら授業に間に合わなくなりますし、学校で服に血が付いたらと、とても心配でした」(ICU二年生 宋さん)
 

「ユニセフは、2014年に月経衛生対処(MHM : Menstrual Hygiene Management)として少女や女性をとりまく環境にも目を向け、8つの課題を打ち出しました。国や法律により状況は変わりますが、日本にも安全で手ごろな価格でサニタリー用品が入手できない人もいますし、知識を持ち安心できる専門家へのアクセスが容易でない人もいます」(limerime須藤)

実は上記8つの課題はSDGsとも密接に関わっています。そして、アメリカのカリフォルニア州、ニューヨーク州とEUには、SDGsの目標の12にあたる「つくる責任、つかう責任」を生理衛生用品に求める動きがあります。


■サニタリー用品にも、プラスチック表示を求めるEUとアメリカの2州
従来の生理用ナプキンの大半はプラスチックでできており、ナプキン1枚につき4枚分のレジ袋相当のプラスチックが含まれています(※2)。女性の一生における生理の回数が約450回だとすると、女性が一生に生理用品として消費するプラスチックはかなりの量に。こういった背景もあり、「2010年頃から環境に配慮したサニタリー用品ブランドが世界中で数十社立ち上がってきた」とlimerimeの須藤は説明します。

「環境の汚染、特に海洋汚染を防ぐために“使い捨てプラスチック製品”の削減を目的に、欧州委員会はプラスチックが使用されているウェットシートおよびサニタリー用品に統一ラベル表示を義務化しました。また、カリフォルニア州とニューヨーク州は、サニタリー用品にも化粧品のように全成分表示を始めました。環境に配慮する目的もありますが、消費者がラベルを見て自分の納得のいくサニタリー用品を選ぶ選択肢を増やす目的もあると思います。limerimeもユーザーのみなさんに自分が何を使っているかを知ってもらうために、全成分を表示しています」(limerime須藤)

実際に「エシカル・サニタリー・プロダクト(Ethical Sanitary Product)」を省略した「エシカルサンプロ(Ethical Sanpro)」という概念も欧米にはあります。「倫理的な衛生用品」と言う意味で、エコ・フレンドリーで持続可能な衛生用品のことを指します。こういった世界のトレンドに対して、薬剤師の岡下さんはフランスの取り組みをこう紹介します。

「フランスでは、2024年からは、“再利用可能”なサニタリー用品(吸水ショーツや月経カップなど)の無償化を目指ししています。サニタリー用品にも環境問題への社会意識が反映されているのでしょう」(薬剤師 岡下さん)


【第二部/変化する生理の表象】生理の表象が変わってきたのはなぜ?
Twitterで広告炎上チェッカーとして活動するコタースカ梨華さん、韓国人と日本人のICU女子大学生2名、医療従事者の男性が意見を交わしました。

■「有料レジ袋に生理用品が勝手に隠される」に疑問を抱くICU大学生
ゴミ焼却率世界第1位の日本でも、脱プラスチックに向けてレジ袋が有料化されました。レジ袋に関して、ICUの近藤さんから興味深いエピソードが。

「これは私の友人の体験ですが、生理用品を買ったら、お店の人が勝手に袋に入れようとしたんです。レジ袋は有料なのに、ひどいなって。そもそも、生理用品を隠したいとも思っていないのに」(ICU一年生 近藤さん)

日本でも2019年に、#NoBagForMe のハッシュタグが大きな反響を呼びましたが、まだまだ生理のタブー視は残っているようです。


■時代とともに変わる月経観
いまでこそ生理のメカニズムは解明され、正常な生理現象として認識されるようになりましたが、生理の価値観は時代により変化してきました。

使い捨て生理用ナプキンの祖と言われているのは、1919年頃にアメリカのキンバリー・クラーク社が発売した「コーテックス」。その時代、アメリカでも生理はタブーで、同社は広告に“生理”という言葉や生理用品の絵や写真も載せず、生理を明るくてポジティブなものとして表現し、生理用ナプキンは世界中に広まりました。

実は、このコーテックスの広告が“生理を隠し、生理を非現実的なほど優しく明るく映し出す”広告表現のスタンダートにしてししてしまったという声もあります。そこで、Twitterで「広告炎上チェッカー」として活動するコタースカ梨華さんに、近年の生理のテレビCMについて分析してもらいました。


■「生理を明るく、優しく、幸せに見せない」イギリスのテレビCM
コタ―スカさんが見せてくれたのはイギリスの下着ブランドModibodiによるテレビCM 。

https://www.youtube.com/watch?v=qSnZSaWhtJs

多様な人種や体形の女性たちが登場した生理の実態を描きます。

「2010年頃まで、生理用品の広告は“幸せの朝”などの言葉と共に笑顔の女性を演出していました。ふわっとした羽やパステルカラーなどを使い、ハッピーさを表現させたものが多かった。また、生理用品の商品特徴もアピールしていました。ところが、海外では10年前ぐらいから、商品特徴や明るさを排除して、生理の苦しさやその実態を隠さず、“リアル”を映し出した表象に変わってきたんです」(広告炎上チェッカー コタースカさん)


■「何かしてもよいし、何もしなくてもよい」韓国のテレビCM
次に見たのは、オーガニックサニタリー用品ブランドのナトラケアによる韓国のテレビCM。生理でつらそうにしている様々な女性のシチュエーションを描写しています。日本語字幕がないので、韓国人の宋さんが解説してくれました。

https://youtu.be/KR6B0pxoNz4

「生理を“あの日”なんて呼ばないで。白い服を着て、“生理の日でも、何でもできる”フリをしないで。生理をなぜ“生理”と言えないの?……という問いかけです。最後の”Do something or Do nothing”は、生理の日は“何かしてもよいし、何もしなくてもよい”という女性自身の選択を肯定するメッセージが込められています」(ICU二年生 宋さん)

イギリスと韓国のCMに登場する女性像の変化について、コタ―スカさんはこう分析します。

「過去の生理のテレビCMに見る明るくて優しい女性像は、当時の社会が女性に期待する役割を映しだしていたんだと思います。ジェンダーロールですよね。過去10年でジェンダー平等が進むにつれ、女性の表象がもっとリアルに変化したのでは? 生理の重い人が明るく優しいCMを見て、気分が晴れればそれでよいと思います。しかし、これまでそういった優しい女性像を見せるCMばかりだったので、それが“押しつけられた”と女性が感じるようになってきたのではないでしょうか?」(コタースカさん)

これに対して座談会で唯一の男性である増田さんの意見は……?

「僕は高校まで男子校で、大学に入るまで家族以外の女性とあまり接したことがありませんでした。だから、やはりテレビで見るイメージが先入観として入ってくるんですよね。母や妹とは生理について話し合ったことはないし、大学に入って女友達から、“生理だから体調が悪い”と教えてもらって、少しだけ知った感じで。こういうリアルな生理をCMで見るまで、妹がいる僕でも想像できませんでした」(医療従事者 増田さん)

ICUの宋さんも近藤さんも、男性の同級生には「私、今日PMSだから」という話はよくするとのこと。現代の10代から20代前半の若者の間では生理の話はそれほどタブー視はされていないかもしれません。

そんな彼女らに、増田さんは「“生理だからつらい”と話されても、実際になんて答えたらよいか、どんなふうに接したらよいか分からないんです。あんまり踏み込んで聞いても失礼かなって。逆に生理のとき、男性はどうしたらいいんですか?」と質問。

ここで、コタ―スカさんが見せてくれたのは、男性が登場する台湾のCMでした。


■「男性が登場する」台湾のCM
台湾のCMには若いカップルが登場し、生理中の彼女の肩を抱こうとする男性が女性の憂鬱そうな顔を見て、スキンシップを止めて彼女のために生理用品などをドラッグストアに買いに行くストーリーです。

https://www.youtube.com/watch?v=o7kBfm9Hqs0

このCMを見たICUの女性たちからは「そうそう、生理のときはそっとしてほしい」「でも、必要なときに必要なサポートをしてくれる彼氏がいたらいいよね」「特に労わってくれなくてもいいけど、つらいという気持ちを理解してくれたら」などの声が上がりました。

増田さんも、「正直、彼女が生理になったときに、どこまで踏み込んで支えたらよいか分からないんですよ。外へ出かけないとかジュースを買って来てあげるなどは実際にしていましたが、彼女の代わりに生理用品を買いに行ってあげるまでは思いつかなかった。だから、男性がお手本にできる、こんなCMが日本にもあればよいと思う」と感想を述べました。

薬剤師の岡下さん曰く、男性が薬局にサニタリー用品を買いに来るのは滅多にないとか。どんどん男性を巻き込んだ生理のCMが出来て、ジェンダーを意識せずに薬剤師と話せるようになってほしいとのこと。

男性が生理用品のCMに登場することについて、コタ―スカさんは「生理を隠そうとする女性に男性がしつこく聞いてくる、生理の時の女性の”取り扱い方法”を上から教える、生理の時に彼女に優しくできない男性など、女性の主体性を尊重しなかったり、不快感を起こしたりする内容は良くない。女性の自己決定権を優先する限り、男性が広告に登場してもしなくてもどちらでもよいと思います」との持論を展開しました。

生理の表象に男性を巻き込むという声にはlimerimeの須藤からも次の意見が。

「limerimeのビジュアルをジェンダーニュートラルにしたのは、生理の問題意識に男性も関わってほしかったからです。生理は女性のものだけれども、生理の理解を進めるには人口の半分の女性だけの力ではなく、男性の力も必要。50%じゃなくて、100%の力で社会を変えていきたいと思っています」(limerime須藤)

また、須藤によると、現在、欧米や韓国やタイのほうが日本よりも様々なデザイン、形態、素材を使ったサニタリー用品が豊富だそう。

「30年くらい前は、欧米のサニタリー用品は厚くてゴワゴワして日本製のものがずっと優秀でした。今回、limerimeを商品開発するにあたり、世界中からサニタリー用品を取り寄せたのですが、竹を使ったもの、ポップなデザインのパッケージ、再生利用可能なタンポンなど、実に多様な製品がありました。世界の女性は日本の女性よりも、ずっと多くの選択肢があるんだなと感じました」(limerime須藤)

サニタリー用品のパッケージについて、ICU二年生の宋さんは「私は可愛い花柄が好き」、一年生の近藤さんは「私はクールでスタイリッシュなものが好き」と、女性の間でも好みが分かれます。CMにしろ、パッケージにしろ、女性が求めているのは画一的な表象ではないようです。


【第三部/学生生活と生理~女子学生の悩み~】100年前の女性より、一生における生理の回数が約9倍も増えている現代女性の悩みとは?
薬剤師の岡下真弓さんとICUの2名が、それぞれの視点でディスカッションしました。

■学生生活と生理~低用量ピルで生理をコントロールする~
開発途上国においては、女性がサニタリー用品へのアクセスがないために学校に行けなかったり、月経小屋へ隔離されたりなどの教育損失が明らかに目に見えますが、日本はどうなのでしょうか? 

「日本でも生理痛で学校を休まなくてはいけない女性もたくさんいます。実際に、薬局でそのようなご相談にのったことが何度もあります。現代の女性は、栄養が行き届いているので初経が早まっており、また働き方の変化もあって婚期が遅くなる傾向にあります。その結果、出産回数が減っています。出産回数が減るということは、生理のなくなる妊娠・出産・授乳を経験しない分、生理を多く経験するということ。100年前の女性より約9倍も生理が増えていると言われています。それに比例して、生理にまつわる様々な悩みや婦人科系疾患も増えています。

また、昔の子どもたちより忙しいライフスタイルから来るストレスも、女子学生の生理痛を引き起こす一因になっているかもしれません。生理は出産にまつわる大切なものですが、同時に病気を引き起こすものともなるので、生理の回数や痛みをホルモン治療でコントロールすることも必要だと思います」と語る薬剤師の岡下さん。

ICUの宋さんは月経不順が悩みだそう。宋さんも近藤さんも「ピルは大学生には高くて手が出せない」と言います。けれども、岡下さんによると、避妊が目的だと自費治療になる反面、月経困難症だと保険適応になるとのこと。とにかく、生理不順やいつもと違う生理痛や我慢できないほどの痛みがあれば、直ちに産婦人科医に診てもらうことが必要だと説きます。

「実は親世代に理解が足りないのが現実。低用量ピルは“避妊用”という固定観念が強く、子どもには低用量ピルが必要ないと決めてかかる大人もいます。フランスのように25歳未満の女性が無料で受診し、低用量ピルを含むホルモンを用いた避妊法が無料で提供されるようになれば、避妊だけでなく多くの若い女性の健康が守られるのに。それこそが少子化改善につながると思います。大人こそ正確な月経教育や包括的性教育が必要です」(薬剤師 岡下さん)


■大学生が気になる生理のQ&A
他にも、ICUの宋さんと近藤さんから岡下さんにこのような質問が出ました。

Q:生理中にニオイが気になります。どうすればよいでしょう? 何が原因ですか?

A:生理中のニオイはできるだけ通気性のよい、ムレにくいナプキンを使い、こまめに取り換えることが必要です。人により、化繊素材のナプキンでカブレやかゆみが起り、その不快感から来るストレスで余計にニオイが気になることも。食べ物やニオイが軽減されることはないので、あまり気にせず、自然なものとして受け止めてあげましょう。いつもより違うニオイの場合は、クリニックを受診してください。

Q:月経過多はどの程度が目安なのでしょうか?

A:朝昼に夜用のナプキンをしないとモレる状況であれば、月経過多かもしれないので医師に相談しましょう。1~2日目の月経量は多いかもしれませんが、3~4日目になっても日中にも夜用ナプキンを使うようでしたら要注意です。

Q:以前、産婦人科医に生理不順を相談したら、「まだ赤ちゃんを産まないから、いまは心配する必要がない」と言われたのですが、大丈夫でしょうか?

A:10代の体が出来上がっていない間は生理不順が起きやすいですが、自分が安心できるまで納得のいく説明をしてくれる医師を探し続けることが重要だと思います。生理不順、PMS、不正出血、生理痛などは「当たり前のもの」「我慢すべきもの」ではないと思ってください。信頼できる医師を見つけたら、まだ若くても定期的に受診をするように心がけましょう。

Q:生理不順の原因は生活スタイル以外にもあるのでしょうか?

A:SNSの投稿や相談にこられる方を見て感じるのは必要以上なダイエットの影響もあると思います。過剰なダイエットは卵巣の機能低下を招き生理そのものが止まってしまう事があります。このママ放っておくと骨粗鬆症になり、骨折しやすくなったりもします。また生理的現象の可能性もあるため、内科・婦人科の双方の受診が必要です。

Q:産婦人科の内診が怖いです。

A:最近は、足をパカッと開いてカーテンを閉めるような昔ながらの方法以外のやり方、例えば、エコーなどで診察する医師も増えています。もちろん、内診が必要なときもありますが、正直に医師に相談しましょう。そして少しでも嫌な思いをしたら、よりコミュニケーションの相性が合う医師を探すことも必要です。

Q:ナプキンよりタンポンを使うメリットは何ですか?

A:医療的な意義は存じ上げませんが、トイレに行く時、いちいちナプキンを持ち歩く必要性が低くなり、精神的に安心する。温泉やプールなど水中に入るイベントがあっても気にせずに楽しむ事ができる。しかしタンポンを使用捨時はトキシックショック症候に注意し、こまめに交換するようにしましょう。


■サニタリー用品、女性の表象、教育や医療に、もっと多くの選択肢を!
最後に、今回の座談会の感想を全員に語ってもらいました。

ICU一年生 近藤さん「私自身、新しい気づきがあってとても充実した2時間でした!
もっと生理について向き合おうと思ったきっかけにもなりました」

IC二年生 宋さん「現代の社会では、以前にはなかったさまざまな新しい病気やコンディションが発症したり発見されたりすることからもわかるように、(生理の回数が増えたのも)月経痛は人間が自ら作り出してしまった症状かもしれません。ですからこのように新しい状況に合った対策や治療が必要で、やはり我慢するべきではないし、また医師を探すことは自分の体を知って守ることにつながることなのだと思いました」

医療従事者の増田さん(男性)「今年の4月から新卒として病院で勤め始めましたが、病院のトイレにも生理用ナプキンが常備されるといいな、と感じました。また、今日国外のCMを見て生理のリアルが迫ってきたので、思春期になる前の小学生の男子に月経教育をすべきだと思いました。思春期以降だと男子は恥ずかしくなるので」

薬剤師 岡下真弓さん「癌サバイバーの女性に接して来ましたが、免疫力が下がり、肌が敏感になっているので、なかなか体にあうサニタリー用品が見つからないという声もありました。布ナプキンや月経カップもよいのですが、利便性の高く肌に優しいナプキンがまだ日本には少ないです。海外のように、もっとたくさんの種類のサニタリー用品があってもよいと思います。そして、子どもだけでなく大人もアクセスできる月経教育や性教育が広く提供されることで、低用量ピルへの理解を深めてより多くの女性の健康が改善されるのでは」

広告炎上チェッカー コタースカ梨華さん「“生理中でも明るく可愛い女性”ではない女性像が世界各国の生理の表象に表れてきました。しかしアジア諸国の広告を見ると、欧米のものよりも、モデルや芸能人を起用したものが多いです。欧米は20年前からルッキズムを意識し、普通の女性をサニタリー用品の広告に起用してきました。メディアに映る生理や女性の表象は、社会のロールモデルやテンプレートになります。メーカーさんやメディアは、よりよい方向へ社会をけん引する力をもっていると思います」

limerime創業者 須藤紫音「従来のサニタリー用品は、女性が生きていく上で必要だった利便性を追求してきた成果であり、決して否定されるべきではないと思います。しかし環境やジェンダー平等、リプロダクティブヘルス・ライツの課題が可視化されてきた今、よりよい社会になるためにはブランドとしてどうすればよいか。いま一度、これまでの“生理の常識”を見直して、みなさんと一緒に考えていきたい。それがlimerimeのミッションです」


【ジェンダード・イノベーション薬剤師/岡下真弓】
「ホルモンを味方にしてワタシらしく生きる」をサポートするフリーランス薬剤師。緊急避妊ピルコンシェルズとしてSRHRに貢献。ホルモンの特性に基づき生物•心理•社会的に分析し、マーケティングのわかる医療者としてハンズオンヘルスコンサルタント 多数あり。
https://biyou-do.jp/
Twitter@biyou_do  Instagram@aromaymi

【広告炎上チェッカー/コタースカ 梨華】
広告炎上チェッカー(@EnjoCheck)として改善提案までする、消費者視点の炎上広告分析がツイッターで注目を浴びる。普段は会社員、秋からはイギリス大学院に進学予定。

【参考】
※1…https://ic.hus.osaka-u.ac.jp/mhm/ ※WHO and UNICEF. 2012. "Consultation on Draft Long List of Goal, Target and Indicator Options for Future Global Monitoring of Water, Sanitation and Hygiene." UNESCO. 2014. "Puberty education & menstrual hygiene management."大阪大学 杉田映理 准教授日本語訳
※2…https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2666789422000277