サニタリー用品代だけじゃない、「5種類の生理のコスト」とは?

女性が一生で費やすサニタリー用品の金額は、よくニュースで報じられますよね。しかし、“生理のコスト”には、お金以外にも様々な種類があります。本記事では生理のコスト、そして、それらが「生理の貧困」や「生理の平等」にどう関係しているのかについて探っていきたいと思います。
 

■サニタリー用品はいくらかかる?

日本産婦人科学会によると、初潮12歳から閉経する50歳まで、女性の生理期間は38年間(※1)。(*個人差があります)
普通の日用と多い日用のオーガニックのサニタリーパッドの平均値として、1枚30円で計算すると、1カ月750円、1年間9,000円、38年間で342,000円となります。
しかし、生理のコストにはサニタリー用品以外のコストもあります。

■5種類の「生理のコスト」
パッド、タンポン、吸水ショーツ、月経カップなどサニタリー用品にも様々な種類があります。その人の肌質、ライフスタイル、健康、生理の状態や置かれた環境に合わせて複数のプロダクトを組み合わせて使用している女性も多いはず。つまり、先述したサニタリーパッドの費用は最低限。実は、サニタリー用品以外にも以下のようなコストがあります。

①サニタリー用品
②環境コスト
③PMS対策アイテム
④低用量ピル
⑤学習・労働・活動機会の損失、生産性の低下

■生理の「環境コスト」とは?
従来の石油由来の素材でできたサニタリーパッドは約9割がプラスチックから作られており、1枚4枚分のレジ袋のプラスチックが使用されていると言われています(※2)。一生で女性が使うパッドは約1~1.1万枚。計算すると、約9~10キロのプラスチックを使用していることになるのです。

サニタリー用品がかける環境負荷も、生理のコストだと考えられるのではないでしょうか?

■月経随伴症状/PMS対策コストとは?
月経随伴症状(月経中におこる痛みなどの身体的症状、いらいらや憂鬱などの精神的症状、人につらくあたってしまうなどの社会的症状、そして、月経前症候群(PMS・月経前、3~10日の間続く精神的あるいは身体的症状の症状に合わせて色々なアイテムが必要とされる生理。症状を和らげるために買うアイテムとして、代表的なものとその費用(38年間)は、次のとおり(一般社団法人newbe調べ ※3)。

ニキビ薬……114,000円
チョコレートなどの嗜好品……912,00円
保温グッズ……912,00円
下着……76,000円
生理痛の薬……54,720円

生理の症状を緩和するために、思った以上にたくさん買い物をしていませんか?

■低用量ピルのコストは?
生理の回数、経血量や痛みに問題があるために、ホルモン治療として低用量ピルを服用する人もいますよね。

低用量ピルを38年間飲み続けると、その費用は約72万円。それにサニタリー用品の34万円を加えて、先述した生理対策のアイテムを購入すると、女性は一生で約149万円も払っていることに! ピル使用者でなくとも約77万円の支出があります。(*個人差があります)(※3)中古車1台分に匹敵するほどのコストとは、驚きです。

■学習・労働・活動機会の損失、生産性の低下
さて、生理痛やPMSで、学校、仕事、スポーツなどをお休みする女性も多いかと思います。学び、働き、活動する機会の損失も生理のコストと考えられるのではないでしょうか? 特に、自分に合ったサニタリー用品、生理対策のアイテムや低用量ピルを購入できない人は、これらを買える人よりも、“機会の損失”が大きくなるでしょう。これが「生理の貧困」であり、「生理の不平等」でもあります。

厚生労働省の調べによると、サニタリー用品を購入・入手できないことが影響する社会生活は、「プライベートのイベント、遊びの予定をあきらめる(40.1%)」「家事・育児・介護が手につかない(35.7%)」、「学業や仕事に集中できない(34.1%)」などでした(※4)。

さらに、生理に関連した症状による3カ月平均の欠勤数は4日、作業量・作業時間の低下は4.5日、作業効率の低下は5.7日とのこと。これを数字に表すと日本全体で1年間に約4,911億円もの損失額になるそうです(※5)。

■「生理の貧困」「生理の平等」に向けた各国の取り組み
このように様々な「生理のコスト」はありますが、女性の機会損失を防ぎ、女性の健康を守るために、近年、「生理の貧困」や「生理の不平等」に対してたくさんの国が取り組んでいます。スコットランド、オーストラリア(ニューサウスウェールズ/ビクトリア)、ニュージーランド、アメリカ(イリノイ州/ワシントン州/ニューヨーク州/ニューハンプシャー州/バージニア州)、フランス、韓国のソウル、ケニア、南アメリカ、ウガンダ、ザンビアなど、多くの国が政府主導で学齢期の女子に無償でサニタリー用品を提供しています。

加えて、アメリカの12の州、ケニア、カナダ、インド、オーストラリア、イギリスも生理用品を課税対象外にしている現状。性と生殖の健康・権利が進むなか、サニタリー用品の無償化を実現する国は増えていくでしょう。

日本でも、無償提供に取り組んでいる地方公共団体や学校が増えて来ました。しかし、その程度はバラバラで情報も行き届いていませんし、サニタリー用品は軽減税率や非課税の対象外となっています。

サニタリー用品は女性にとって生活必需品。トイレにトイレットぺーパーが必ず設置されているように、誰にでも手の届くところにサニタリー用品があればよいと思いませんか?

【参考】
※1…日本産科婦人科学会の「生理の貧困」に関する動画
※2…Menstrual products: A comparable Life Cycle Assessment – Cleaner Environmental System
※3…月経にかかる一生分の費用 – 一般社団法人newbe
※4…「『生理の貧困』が女性の心身の健康等に及ぼす影響に関する調査」の結果を公表します – 厚生労働省
※5…健康経営における女性の健康の取り組みについて - 経済産業省ヘルスケア産業課
※6…20 Places Around the World Where Governments Provide Free Period Products – GLOBAL CITIZEN LIFE