2023.12.26
読みたい本・漫画3冊 Part 2 - 月経について -
普段、当たり前のように使っている生理用品。コンビニに行けばいつでも売っている生理用品は、つい60年ほど前まで、身近な存在ではありませんでした。今回ご紹介する本・漫画は、月経を通じて女性の歴史と文化に光を当て、月経が社会的な制約や文化的な価値観によって、どのように形作られてきたかを紐解きます。
■生理用品の社会史(角川ソフィア文庫) 田中ひかる著
【内容】
人類が、生理用品改良に重ねてきた奮闘の軌跡―ー。日本女性の生活を大きく変えた画期的な商品「アンネナプキン」。その誕生は、ほんの50年ほど前のことである。女性の社会進出を支えた商品開発の裏には、一人の女性経営者の一筋縄ではいかないドラマがあった。植物、絹、脱脂綿、ビクトリヤなど、不便で不快だった古い経血処理の方法から、欧米ほどタンポンの使用が普及しなかった理由まで、一大ビジネスへと発展した、女性史にとどまらない日本社会の変遷を明らかにする。(Amazon公式サイト)
「40年間お待たせしました!」というキャッチコピーで、1961年にアンネ社が「アンネナプキン」を発売したのが、日本における生理用ナプキンのスタート。発明したのは27歳の主婦、坂井泰子でした。「40年間」の意味は、アメリカでは40年も前に使い捨て生理用品が発売されていたから。それまで脱脂綿を使っていた日本の女性たちはアンネナプキンを買いに走り、生理を「アンネ」と呼ぶようになりました。しかし現在、アンネ社は存在しません。日本女性の生活に革命を起こしたアンネナプキンに何が起ったのかーー。
本書は、アンネナプキンの他にも、生理用品がなかった時代の女性がおかれた状況から、現在の月経をとりまくイデオロギーまで、月経に真摯に向き合った歴史社会学書です。アカデミックながらも、壮大な歴史小説を読んでいるような気分になります。女性にとってなくてはならないものなのに、あまりにも身近すぎて普段は顧みることもない生理用品。その歴史を知ると、私たちが享受する生理用品が先人女性たちの試行錯誤により、生まれたものだと実感します。
■月経の人類学 女子生徒の「生理」と開発支援(世界思想社)ー杉田映理著
【内容】
女性の月経をめぐる問題は、発展途上国だけで起きている問題ではない。わたしたちの身近なさまざまなところで、貧困に起因して生理用品が入手困難な状況があることに対して女性たちが声を上げている。特に "period poverty(生理の貧困)"という表現をイギリスのマスコミが用いて以来、状況を打開し"period equity(生理の平等化)"を求めるうごきが各地に広がっている。本書では、月経をめぐる国際開発の動向をまず整理し、各地のローカルな文脈と月経対処の現状を「今」同時期にとらえる。(Amazon公式サイト)
日本では「学生の5人に1人が生理用品の入手に苦労している」とNHKが報じているのにも関わらず(※)、生理用品は無償化どころか、いまだに課税対象商品となっています。生理用品を買う経済力のある方、生理が比較的軽い方には分からない、月経がもたらす苦しみ。月経の痛みは、健康被害のほかにも、女性が学校や職場へ行けなかったり、実力を発揮できなかったりと個々の女性の機会損失につながります。そして、それは個人や家族だけではなく、社会的にみても大きな損失です。
いま、なぜ月経対処に関する意識を高める必要があるのかーー。月経対処についてあらゆる角度から課題点を浮き彫りした本書の著者、大阪大学大学院人間科学研究科の杉田映理教授は、2023年に内閣府特命担当大臣より「令和5年女性のチャレンジ賞」を表彰されています。月経にまつわる国際状況を知りたい方にお勧めしたい本です。
■生理ちゃん(KADOKAWA 全4巻)ー小山 健著
【内容】
「大変なのを生理のせいにできないから大変なんです」
悩める女性たちの元にも、ツキイチで生理ちゃんはやってくる。イタイ、ツライ、メンドクサイを吹き飛ばすほど、笑って泣けちゃう大傑作!共感の嵐を巻き起こす生理ちゃんが、嬉しい描き下ろしも収録して待望のコミックスに!
2019年4月、手塚治虫文化賞短編賞を受賞したこの漫画は、二階堂ふみさんの主演で実写映画化されています。生理を「生理ちゃん」と擬人化した本作は、月経をポジティブに表現することで生理用ナプキンを普及させた1960年代以降とは打って変わり、生理をネガティブな現象として捉え、コントロールしようとする”いま”の月経観を体現しています。
近年、パステルカラーでふんわりとフェミニンに見せていた生理のテレビCMがより生理のリアルに迫ったものに変わりつつありますが、その背景には「生理ちゃん」のように、”生理の本音”が語れるようになり、実際に低用量ピルや薬などで月経の痛みをある程度コントロールできるようになった社会があるのでしょう。
月経を必要なもの、暗いもの、イヤなものと捉えるのは人それぞれ。同じ人でもそのときによって変わるでしょう。だからこそ、誰もが自分の月経観を大切にし、自分にあった生理用品を選択できるようになったらよいですね。
月経を通して女性の歴史や文化の一端、また、ジェンダーの役割や社会的な不平等について考えるきっかけとなる上記4冊は、ぜひこの年末年始にゆったりと読んでみてくださいね。
【参考】
※https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4530/
■生理用品の社会史(角川ソフィア文庫) 田中ひかる著
【内容】
人類が、生理用品改良に重ねてきた奮闘の軌跡―ー。日本女性の生活を大きく変えた画期的な商品「アンネナプキン」。その誕生は、ほんの50年ほど前のことである。女性の社会進出を支えた商品開発の裏には、一人の女性経営者の一筋縄ではいかないドラマがあった。植物、絹、脱脂綿、ビクトリヤなど、不便で不快だった古い経血処理の方法から、欧米ほどタンポンの使用が普及しなかった理由まで、一大ビジネスへと発展した、女性史にとどまらない日本社会の変遷を明らかにする。(Amazon公式サイト)
「40年間お待たせしました!」というキャッチコピーで、1961年にアンネ社が「アンネナプキン」を発売したのが、日本における生理用ナプキンのスタート。発明したのは27歳の主婦、坂井泰子でした。「40年間」の意味は、アメリカでは40年も前に使い捨て生理用品が発売されていたから。それまで脱脂綿を使っていた日本の女性たちはアンネナプキンを買いに走り、生理を「アンネ」と呼ぶようになりました。しかし現在、アンネ社は存在しません。日本女性の生活に革命を起こしたアンネナプキンに何が起ったのかーー。
本書は、アンネナプキンの他にも、生理用品がなかった時代の女性がおかれた状況から、現在の月経をとりまくイデオロギーまで、月経に真摯に向き合った歴史社会学書です。アカデミックながらも、壮大な歴史小説を読んでいるような気分になります。女性にとってなくてはならないものなのに、あまりにも身近すぎて普段は顧みることもない生理用品。その歴史を知ると、私たちが享受する生理用品が先人女性たちの試行錯誤により、生まれたものだと実感します。
■月経の人類学 女子生徒の「生理」と開発支援(世界思想社)ー杉田映理著
【内容】
女性の月経をめぐる問題は、発展途上国だけで起きている問題ではない。わたしたちの身近なさまざまなところで、貧困に起因して生理用品が入手困難な状況があることに対して女性たちが声を上げている。特に "period poverty(生理の貧困)"という表現をイギリスのマスコミが用いて以来、状況を打開し"period equity(生理の平等化)"を求めるうごきが各地に広がっている。本書では、月経をめぐる国際開発の動向をまず整理し、各地のローカルな文脈と月経対処の現状を「今」同時期にとらえる。(Amazon公式サイト)
日本では「学生の5人に1人が生理用品の入手に苦労している」とNHKが報じているのにも関わらず(※)、生理用品は無償化どころか、いまだに課税対象商品となっています。生理用品を買う経済力のある方、生理が比較的軽い方には分からない、月経がもたらす苦しみ。月経の痛みは、健康被害のほかにも、女性が学校や職場へ行けなかったり、実力を発揮できなかったりと個々の女性の機会損失につながります。そして、それは個人や家族だけではなく、社会的にみても大きな損失です。
いま、なぜ月経対処に関する意識を高める必要があるのかーー。月経対処についてあらゆる角度から課題点を浮き彫りした本書の著者、大阪大学大学院人間科学研究科の杉田映理教授は、2023年に内閣府特命担当大臣より「令和5年女性のチャレンジ賞」を表彰されています。月経にまつわる国際状況を知りたい方にお勧めしたい本です。
■生理ちゃん(KADOKAWA 全4巻)ー小山 健著
【内容】
「大変なのを生理のせいにできないから大変なんです」
悩める女性たちの元にも、ツキイチで生理ちゃんはやってくる。イタイ、ツライ、メンドクサイを吹き飛ばすほど、笑って泣けちゃう大傑作!共感の嵐を巻き起こす生理ちゃんが、嬉しい描き下ろしも収録して待望のコミックスに!
2019年4月、手塚治虫文化賞短編賞を受賞したこの漫画は、二階堂ふみさんの主演で実写映画化されています。生理を「生理ちゃん」と擬人化した本作は、月経をポジティブに表現することで生理用ナプキンを普及させた1960年代以降とは打って変わり、生理をネガティブな現象として捉え、コントロールしようとする”いま”の月経観を体現しています。
近年、パステルカラーでふんわりとフェミニンに見せていた生理のテレビCMがより生理のリアルに迫ったものに変わりつつありますが、その背景には「生理ちゃん」のように、”生理の本音”が語れるようになり、実際に低用量ピルや薬などで月経の痛みをある程度コントロールできるようになった社会があるのでしょう。
月経を必要なもの、暗いもの、イヤなものと捉えるのは人それぞれ。同じ人でもそのときによって変わるでしょう。だからこそ、誰もが自分の月経観を大切にし、自分にあった生理用品を選択できるようになったらよいですね。
月経を通して女性の歴史や文化の一端、また、ジェンダーの役割や社会的な不平等について考えるきっかけとなる上記4冊は、ぜひこの年末年始にゆったりと読んでみてくださいね。
【参考】
※https://www.nhk.or.jp/gendai/articles/4530/