インタビュー

「株式会社VVV」創業者・須藤紫音 

~limerimeを通して“new + be [新しいあり方]”を伝えたい~

 

■「とりあえず買っている」衛生用品の選択肢を広げたい

――なぜlimerime(ライムライム)を立ち上げたのか?

 

天然素材を使った衛生用品が日本には圧倒的に少ないからです。3年前にブランディング・マーケティングのお仕事をしていたところ、女性のニーズを調査したことがありました。「私たちが、欲しいもの、変えたいものはなんだろう?」と考えて女性スタッフとディスカッションした際に、衛生用品を“とりあえず買っている”ことにハッとしました。私たちの生活に必要不可欠であり、なおかつ、デリケートな部分に密着するものなのに、なぜ私たちは下着やコスメみたいにこだわらないのでしょう?

 

この背景には、ビジネスの意思決定層は男性が多いことから衛生用品の重要性が気づかれず、意識がなかなかアップデートされてこなかったことがあるのかもしれません。調べてみると日本の衛生用品の選択肢が海外に比べて少ないことを知りました。

 

ほかにも、私の息子がもつ極度の食物アレルギーも天然素材を考えるきっかけになりました。医師よりご指導いただいたことの一つとして、お肌の状態をなるべく良い状態に持っていくことがアレルギーの治療に効果的であることを知ったんです。経口吸収と同時に経皮吸収を考え、肌の炎症にも気をつけること。食物アレルギーは直近で摂取した物質=経口吸収だけを考えがちですが、アトピー性皮膚炎や乾燥などによる肌あれなどで炎症が起きている部分があると、そこがある意味工場となってアレルゲン物質が体内に吸収される。そのため、経皮からの吸収をしっかりと抑えること=皮膚の炎症を減らした上で、経口吸収の治療を進めていくプロセスがあることを学びました。

 

息子のことがあってから私は自分や息子の体にとって、なるべく無理のない範囲でよいものを使いたいと感じています。使い捨ての衛生用品はまだまだ選択肢が少ない状況。これを切り開きたいと思いから、天然の竹素材からできたlimerimeが生まれました。

 

 

■コットンではなく「竹」を選んだ理由とは?

――多くのナプキンにはコットンが使われているが、なぜlimerimeは竹なのか?

 

3つ理由があります。第一にコットンを栽培するよりも、竹を栽培するほうが水や肥料など環境コストがかかりません。また成長スピードが木材などに比べて圧倒的に早いです。カーボンニュートラルの視点からも注目すべき素材です。

 

第二に、国内外の天然素材のナプキンを取り寄せて使ってみたなかで、とても肌触りがよかったのが竹製のトップシートだったこと。コットンや、シルクよりも竹は制電性があるので、かゆみ・かぶれの原因である静電気が起きにくいです。

 

第三に、竹は日本でも昔からおむすびを包むために笹の葉が使われるなど、抗菌・防臭作用や水分を吸収する特長があるからです。

 

 

■天然・植物由来素材の衛生用品がからだと環境に優しい理由

――天然・植物由来の素材の衛生用品がからだと環境に優しい理由は?

 

大きく分けて2つの理由があります。1つ目は、敏感肌や乾燥肌に優しいため。一般的なナプキンは石油由来の化繊、香料、着色料が使われていたり、塩素を使った漂白が行われていたりします。ポリエステル・ポリプロピレンなどの化繊は、静電気を発生させやすい性質があるので、デリケートゾーンのかゆみやかぶれが起きることもあります。できるだけ天然素材のものを使用することで、肌トラブルの軽減が期待されます。

 

2つ目は、竹素材はカーボンニュートラルであるほか、PLAは焼却時の燃焼熱がポリエステルなどに比べて低く、CO2の発生も抑えることができるから。現在多く流通している多くの製品は、表面材に加え、その下に使われている吸収体、防漏剤、パッケージなどを含め、石油由来のポリエチレン・ポリプロピレンなどであることが多いです。使い捨ての衛生用品は利便性が高く、現代社会になくてはならないもの。しかし、この先の未来のために環境配慮という点を必ず考えていかねばならないと思います。

 

 

■インクルーシブデザインとnew + be [新しいあり方]

――インクルーシブデザインを採用した理由とは?

 

衛生用品は隠すものだとされて、コンビニやドラッグストアでは購入したことがわからないように茶色の紙バッグなどに包装されます。limerimeはそういったタブーを打ち破るようなインクルーシブなデザインにしたかったんです。生理のタブーは私たち女性が変えていかなくてはいけませんが、社会を変えるには男性の意識も変えないと難しい。例えば、育児などで買い物に行く時間がない時に、パートナーや異性の家族に衛生用品を買ってきてもらうことを気軽に頼めるような、そして、オールジェンダーが恥ずかしがらずに手に取れるようなインクルーシブなキービジュアルが必要だと思っています。limerimeのプロダクトを通じて、健康や性についての話ができるようになったり、そんなことが実現するといいなという思いでインクルーシブデザインにしました。

 

 

――「new + be [新しいあり方]」の意味とは?

 

「new + be [新しいあり方]」というブランドビジョンをもとに、デザインを通じて多くの人が健康と環境課題に意識をむけ、ジェンダーロールに縛られない自分らしい選択をできるような社会を提案していきたいと考えています。また、new + beには“新参者”という意味もあります。参入がむずかしいとされる衛生用品市場で、私たちのビジョンに共鳴してくれるコミュニティを小さいながらも築いていきたいと思っています。