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〈ニューバランス〉が考えるウェルネスのかたち

〈ニューバランス〉が考えるウェルネスのかたち

quiet voices notes. 01

New Balance Japan

Chapter 2

 

境界を越えて、ひらかれていく日常

 

働き方が整えられることで、個人の選択にも少しずつ変化が生まれていきます。

〈ニューバランス〉と〈limerime〉。それぞれが積み重ねてきた視点を持ち寄ることで生まれた対話は、やがて「境界をどう捉えるか」という問いへとつながっていきました。

後編では、働き方からさらに一歩踏み込み、社会の中でのボーダーレスのあり方について考えていきます。

 

limerime quiet voices notes. 01_Chapter1

こちらから → Chapter1

 

 

境界を引かないという考え方

 

須藤:〈ニューバランス〉の働き方のお話を伺って、境界をつくりすぎない柔軟さを感じました。

 

田中:すべてをきっちり分けるのではなく、ある程度の区切りを持ちながらも固定しすぎないことを大切にしています。働く時間や場所、仕事とプライベートの関係も、人によって心地よいバランスは異なりますから。

 

臼井:ブランドとしても「スポーツとカルチャーの交差点」という位置づけをしていて、それぞれが無理なく共存することを大切にしています。そうした考え方は、社員の働き方にも自然とつながっているように思います。

巨大なスニーカーのオブジェが目をひく、本社オフィスの入り口。

 

変化の先に見えてきた価値観

 

須藤:社会全体としても、12年前と比べて働き方は大きく変わってきていますよね。

 

臼井:そうですね。当時もある程度フレキシブルではありましたが、ここまで選択できる状態ではありませんでした。

 

田中:以前は「こうあるべき」という前提が強かったですが、今はそれぞれに合ったあり方を選ぶ方向に変わってきていると感じます。

 

須藤:そうした変化の中で、私自身も働き方や生活を見つめ直すようになりました。その延長でサニタリーブランドを立ち上げた部分もあって。お二人から見て、〈limerime〉の設立にはどんな印象を持たれていましたか。

 

臼井:最初に知ったのは新聞記事でしたが、ストンと腑に落ちました。須藤さんのそれまでの仕事ぶりから、いずれ自分で何かをつくる方だろうなと思っていたので。クリエイティブな方向を想像していたので実業だったことは少し意外でしたが、事業内容を見て納得しました。社会の中でまだ扱いづらい領域に踏み込んでいる。その必然性が、とても須藤さんらしいと思いました。

 

田中:私も強く共感しました。日常の中で感じている違和感を起点に、「こういうものがあったらいいな」という思いを、そのままかたちにしている。それをきちんと事業として成立させている点がすごいと思いました。

 

 

 

見えにくいテーマをひらいていく

 

須藤:〈limerime〉を設立して間もない2年ほど前から、〈ニューバランス〉では本社オフィスの女性用トイレにナプキンを設置していただいていますよね。サニタリー用品を福利厚生として整える取り組みは、当時まだ広くはなかったと思うのですが、社内ではどのように受け止められていましたか。

 

臼井:SDGsやウェルネス経営の一環として導入しましたが、特に違和感はなく、自然に受け入れられた印象です。女性社員からの反応もよく、環境として必要なものが整った、という受け止め方だったと思います。

 

田中:特別なものとして扱わず、そこにあるものとして機能していたのが大きかったと思います。ジェンダー差を無理に言葉で説明するのではなく、必要な人が自然に手に取れる状態を意識しました。

 

須藤:からだや性に関することは、どうしても個人の中にとどまりやすいテーマでもありますよね。

 

田中:そうですね。ブランドとして活動しているピンクリボン運動も、最初は社内への理解に対する難しさがありました。どう伝えるか、どう関わってもらうかを試行錯誤しながら進めてきました。女性だけでなく、男性や家族にも関わることだと伝えていく中で、少しずつ意識が変わっていったように思います。

 

須藤:シンプルな手段のほうが伝わることもありますが、一度テーブルにのせることが必要なテーマでもありますよね。見える場所に出すことで、少しずつ距離が変わっていく。

ブランドの背景や素材のこだわりを伝える説明が添えられた、〈limerime〉のナプキン。

 

 

なぜ、それを言葉にするのか

 

須藤:今回のように企業とブランドが対話することの意味についてもお伺いしたいです。

 

臼井:どんなことも、「なぜそれをやるのか」という視点が大事だと思っています。企業やブランドも同じで、背景や理由があるからこそ、人に選ばれるものづくりができるのではないかと。今回の対談も、それぞれの“Why”が触れ合う場だったと感じています。

 

須藤:その“Why”を重ねることで、互いの視点をめぐらせながら、理解が深まっていく実感がありますね。

 

田中:対話によって生まれた問いを外にひらくことで、受け取った人がまた異なる立場で考えるきっかけになることも大切だと思います。

 

須藤:私たちが扱っているテーマは、本来とても身近なものですが、日常の会話には上がりにくい側面もあります。だからこそ、誰かと話すことで、自分の中にある感覚に気づかされることも多いんです。対話は、言葉にならなかったものに少しずつ輪郭を与えていく時間なのだと思います。

見えにくかったものが少しずつ言葉になり、誰かと共有されていくことで、日常の風景は静かに変わっていきます。

選び方は人それぞれでいい。ただ、その選択をしやすい環境があること。

そんな当たり前が、これからのウェルビーイングを支えていくのかもしれません。

 

quiet voices notes. 02

<Guest>

New Balance ニューバランス

1906年に、米国ボストンで矯正靴のメーカーとして創業したスポーツブランド。社名は、履いた人に「新しい(new)バランス(balance)」をもたらすことに由来する。鶏の足の骨格から着想を得たアーチサポートインソールを原点に、整形外科的知識に基づく高いフィット感と快適な履き心地で、世界中で愛されている。

公式WEB https://shop.newbalance.jp

公式SNS InstagramInstagram 

 

New Balance Japan   人事総務部 総務課 マネージャー

臼井 史彦さん Usui Fumihiko

Profile

〈ニューバランスジャパン〉に30年勤務。長年のピープルマネジメント経験を通して、社員一人ひとりがコアバリューを発揮できる環境づくりを大切にしている。プライベートでは、ハンディキャップと向き合う子どもの成長を見守りながら、公私ともに自分らしい生き方を実践。モットーは「自彊不息(じきゅうふそく)」。特技は居合道。

 

New Balance Japan  人事総務部 総務課 アシスタントマネージャー

田中 和加子さん Tanaka Wakako

Profile

大学卒業後、〈ニューバランスジャパン〉に入社。営業、マーケティングを経て、現在は人事総務部に所属。自身の病気の経験から健康や働き方への意識を深め、社員にとってより良い環境づくりに取り組む。学生時代から続ける水泳をはじめ、スポーツ観戦やアウトドア、音楽ライブ鑑賞が趣味。1児の母。

 

 

limerime ディレクター須藤 紫音 Sudo Shion

 

photographs 坂本美穂子

edit + text 白﨑寛子